それでは、テキスト「無敵鉄姫スピンちゃん」(ISBN:4088736567)の91ページを開いてください。
(持っていない人は、即、購入してください。これは義務です)


田中さんの見事な分析により、このスピンちゃん4回転目に潜んだV博士の不可思議な発言が浮き彫りにされたわけですが、このセリフ、

> 「ちょっと待て 今のは言葉のアヤで…」

を「誤用」と捉えるのは早計といわざるをえません。
なぜなら、この「言葉のアヤ」という表現は、天才ロボット工学者であるV博士の面目躍如ともいうべき会心のセリフであり、まさに「ここではこれしかない!」という言葉だからです。


そもそも、このセリフは、

> 「ワシは ここの生徒が目的で来たんだ!! キサマなんぞに興味はない!!」

という失言のフォローのためにV博士が口にしたものですが、ここで凡百の人間であれば、一般的に「正しい」と思われる言葉、

「ちょっと待て 今のは口が滑って…」

を使おうとするに違いありません。


しかし、そのようなことをいえばどうなるか。
先に放った「興味はない」という言葉が、まぎれもなく真実であったと駄目押ししてしまうことになり、ランちゃんは深く傷ついてしまうことでしょう。


まずいことに、ランちゃんはビューナス女学院の校長です。
その悲しみが恨みや怒りに転化したとすれば、V博士は、二度とふたたび学院の門をくぐることはかなわなくなってしまいます。

そこで、博士は一計を案じ、「さっきの言葉は悪気があったわけじゃないし、傷つけるつもりもなかったんだよ。ゴメンね」という意味を込めて「言葉のアヤ」という表現を選んだのです。


V博士は、これだけの「機転」と「読み」を一瞬のうちにおこなったわけですが、それは驚くようなことではありません。
もともと博士は独力でエロボットを開発しようとするほどの天才科学者です。
性的欲求を満たすことを目的としたロボットであるならば、限りなく人間に近いデザインのみならず、限りなく人間に近い自然な思考形態を必要とすることはここで強調するまでもないでしょう。すなわちV博士は機械工学の専門家であると同時に、人の心にも通じた心理学者であるに違いないのです。


ただ一つ、V博士の誤算があったとすれば、それはランちゃんの乙女心を読み切れなかったことでしょう。恨みを買わないためだけに紡いだフォローの言葉も、乙女フィルターを通してしまえば愛の告白になってしまうのです。

10回転目でランちゃんがV博士にベタ惚れになってしまった理由は、この全校生徒やPTAの前で放たれた強烈な告白によるものである……と考えるのは、けっして深読みのしすぎとはいえないのではないでしょうか?


(私信)
田中さん、宿題難しすぎます。