完全覇道マニュアル(公式サイト)

昨日Amazonから届いたものですが、本日、一気に読み上げました。
感想を一言でいうと……


いろんな意味で、原典である『君主論』を読みたくなりました。
マキャベリズムの入門書として、これ以上のものは考えられません。

前作の『完全パンクマニュアル』が非実用的なことを実用的に描くという一点を追究していたのに対し、この『完全覇道マニュアル』はおふざけのような題材を用いながら、小説としても実用書としてもハイレベルなものに仕上がっていて、作者の力量が格段に上がっていると思わされました。
歯に衣着せずにいわせてもらうなら、前作が「すごくレベルの高いアマチュアの作品」であったのに対して、本作は「誰の目にも耐えられるプロの作品」になっていると感じます。
(方向性がまるで違う作品であるということは重々承知していますが)


なによりもまず「小学校のクラスの覇権争い」という題材設定が秀逸です。
実用面から見れば、原典の難しい専門用語をわかりやすく置き換えるための道具としてスマートに機能していますし、読み物(小説)の面からすると、読者のほとんどが共通認識として持っているイベントや道具を出すことによってすくない説明で舞台設定を理解させることに成功し、文章のほとんどをストーリーの進行に費やすことを可能としています。

これは、短い章立てながらも、その中で起伏に飛んだストーリーを描ききっているという点につながっていますが、この「読みやすさ」は非常に大きな武器だと思いました。
なによりも、「マニュアル」は読んでもらわなければ意味がありませんからね。


マキャベリズムという言葉に対しては、銀英伝のオーベルシュタインくらいしかイメージを持っていなかった私ですが、この『完全覇道マニュアル』によって、大きく啓蒙されました。
実際、この本は(小学生とはいわないまでも)学生のうちに読んでおくべき本だと思いますし、楽しく読める本だと思います。


……それにしても、「はなこちゃん」のカットがもっと良い子っぽい顔だったら腹黒さが浮き彫りになってさらに楽しめたんじゃないかなぁと思うと残念です。
もちろん本作品の主旨からいうと、そういうところで意外性や笑いを誘う必要はないのかもしれませんが、小憎らしい顔で小憎らしいことを喋っていると、単に、読者がキャラクターを嫌うだけに終わってしまうんじゃないかと……。